ここでまずご紹介するのが、グンナール・アスプルンドの設計した“森の墓地”と呼ばれる墓地、スコーグスシュルコゴーデン。“墓地をデザインする”なんて概念のなかった私は、兼ねてからこの地を訪れるのを楽しみにしていました。ここを訪れて一番感じたことは、「”死”って決して忌まわしいことじゃないんだ」という感覚。20代半ば頃の私は、まだまだ「死」というものにマイナスのイメージしか抱いておらず、ましてや「墓地」といったらイメージは日本のあのおどろおどろしい夜の墓地だったのです。
スコーグスシュルコゴーデンの建築史上における意義は以下のものであったと言います。
1. 20世紀前半の建築潮流が次々に変化した時期に設計されたにも関わらず、今日におよんでも古さを感じさせない時代を超越したデザインを確立したこと。
2. 単に効率よく葬儀や火葬を行うことができる機能的な解決にとどまらず、葬儀に参列する遺族の深層心理にまで踏み込んだ建築計画となっていること。
3. 北欧人にとって精神的な故郷といえる「森」へ還って行く人間の運命を、直感的に悟らせるような建築表現を実現したこと。
(Wikipediaより抜粋)
埋葬されている有名人としては、グンナール・アスプルンド自身や、スウェーデン出身のハリウッド女優、グレタ・ガルボなどが挙げられます。
スウェーデンなどの北欧では、死後、人(精神)は森へ還るという考え方が根付いており、それゆえこの墓地も森の中に立地しています。静かな森の中に並ぶ墓石は、なぜかとても慎ましやかで美しく見え、スウェーデンの人々の死生観、生きることに対する哲学が伝わるような気がします。
そして、見逃せないのが火葬場の設計。待合室から礼拝堂への動線は一方向になっており、大礼拝堂の室内は劇場の設営手法が援用されていると言います。葬儀での最後のお別れの後、棺はリフトで地下の火葬場へと降ろされていく。右端が少し内側に曲がったベンチは遺族が隣に座った人を慰められるように配慮されて設計されているそう。いずれも、遺族や、故人を見送る人々の感情に最大限配慮されており、その手法は見事です。建築って、デザインって、こういうためにあるんだな、と心底感動しました。
人生の節目に建築やデザインが寄り添う。人の営みの中にうまく建築やデザインが入り込んだ、素晴らしい融合を目にしたと感じました。
1940年にこの火葬場が竣工するまで、25年間の月日という依頼の長期間を要したそう。その美しさは今もなお色褪せることなくその場に佇んでいたように感じられました。
最近では日本においても、有名な建築家デイヴィッド・チッパーフィールドによって作られた墓園が関西に誕生しています。ここにはどのような死生観が込められているのでしょうか。ぜひ関西に足を運ぶことがあれば訪れたいと思います。
猪名川霊園(兵庫県)
http://boenf.org/architecture/inagawa.html
〜スウェーデンとドイツと日本で見つけた建築デザインが教えてくれたこと〜