-最後に-
と、ここまでは、私が今までに訪れた数々の海外の建築を紹介しました。どれもその土地、時代背景ならではのスピリットが詰まっていて、訪れて空気を感じるだけでも心が洗われるし、帰国したらしたで、訪れた場所への学びを後から深めるのもとても愉しい。やっぱり、いろんな場所を訪れて、いろんな考えに触れるのは、普段、雑貨をセレクトする上でもすごく大きなインスピレーション源になるのです。このノート、どこでどんな風に作られたんだろう。材質は?歴史は?って。どんなものでも固有の歴史や成り立ちがある。今の時代は、物質主義ではなく、モノよりコト重視、であれば雑貨だって、たかが雑貨、されど雑貨でいろんな可能性を秘めているのでは?!と壮大なことを考えながら、今日も可愛い雑貨を追うのです。
-【番外編1】日本の街を歩く 〜愛媛松山市〜 -
外へ行けば行くほど、自分の身の回りにも関心がいくもの。海外へ行くまでは興味が薄かった自分の地元にも、自然と目を向けるようになりました。「そんなに海外のデザインにどっぷりハマっちゃったら、日本では物足りないんじゃない?」なんて言われることもあるけれど、物事の背景を読み取るクセがつけば、「いつもの風景」だって、まったく違う見え方をしてくる。だからいろんな場所を行き来するのはやめられないし、なんだかんだ最後は自分の居場所に戻って来たくなるのです。
日本で訪れた街の中で特に印象に残っているのが、愛媛県松山市。東京とか大阪とか、大都市ももちろん面白いんだけど、新旧融合した雰囲気が大好きな私にとっては、歴史的な街並みの残る場所は琴線に触れるものがあります。
コンパクトシティ」という構想によって、様々な文化施設が集合しているそうで、都市の機能がぎゅっと一つに集約されています。観光に持ってこいの要素が凝縮されたエリアと、郊外ののどかな風景、変化に富んだ表情を見せてくれます。
元々は、とあるアートイベントのために初めて愛媛県に訪れたのですが、古くから残る歴史的な風景にアートが組み合わされる光景は、やはりとても印象的でした。しかも、会場は、あの有名な道後温泉。
道後オンセナート2018
http://dogoonsenart.com/
こちらはもともと、道後温泉本館が改築120周年の大還暦を迎えた記念として開催された「道後オンセナート2014」が発端となっています。道後温泉の各地の旅館内や商店街で、アーティストたちが作品を展示しています。
写真元:https://manimanimag.jp/a0334_20180209/
今年のもので特に印象に残ったのはこの作品。
「部屋本 坊ちゃん」
http://dogoonsenart.com/art/%E9%83%A8%E5%B1%8B%E6%9C%AC-%E5%9D%8A%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%82%84%E3%82%93/
「坊ちゃん」は夏目漱石の松山での体験をもとに書かれた小説だそうで。部屋そのものを書籍にしてしまう発想と、部屋の迫力に圧倒されました。
瀬戸内海に面し、1年を通じて気候が温暖な松山。ゆっくりと物思いにふけったりあれこれ考え事をするにはもってこいの場所だったのかもしれません。今では、日本最古の名湯を誇りながらも西側は利便に優れた都会の快適さを合わせ持ち、心地よい暮らしがデザインできそうです。
参照:http://matsuyama-sightseeing.com/about/
ちなみに、松山の観光サイトですが、すごく洗練されたデザインで見やすく、驚きました。
-【番外編2】日本の街を歩く ~京都府京都市・宇治市~ -
新旧の融合が面白い場所といえば、何と言っても京都!数々の歴史的名所の宝庫である上に、アートムーブメントもかなり盛ん。私が京都で訪れたアートスポットをいくつかご紹介します。
たまたま雑誌で見つけて足を運んだのが、KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)。
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
http://www.kyotographie.jp/
こちらは2013年から毎年開催されているそうで、古い歴史を持つ会場と現代写真のコンビネーションがどれも新鮮ですごくおもしろかったです。写真展の会場をいくつか回るだけで、一緒に京都の歴史深い場所を訪れることができ、知らぬ間に京都観光もできてしまうのもとても愉しいです。アート写真の鑑賞はなかなか敷居が高いと感じていたのですが、そういったイベント性があることで楽しんで鑑賞することができました。
アートに関しては市内の方が見所が多いのですが、先日観光で宇治を訪れた際に、ちょっとアートなおもしろい寺院を見つけました。
正寿院
http://shoujuin.boo.jp/
なんと、この寺院にの客殿には猪目窓(いのめまど)と言われるハート型の窓があるんです。
インスタ映え間違いなし!ですが、このハートの形は猪目(いのめ)と呼ばれるれっきとした日本の文様。古来から日本の神社仏閣の様々な部分で用いられてきたそうです。読んで字の如く猪の目の形がその由来で、魔除けや火除けに効くとされるそう。
ハートで切り取られた外の風景に、160枚のえが天井に敷き詰められた「花天井画」も合わさり、その空間はアートそのもの!
参照:https://www.travel.co.jp/guide/article/27137/
さすがは京都。市内じゃなくても各地にアートと伝統が散りばめられているんですね〜。とはいえ、宇治市も京都の中ではマンモス都市!京都府で2番目の人口を誇るそう。世界遺産にも登録されている、平等院鳳凰堂は10円玉の絵柄として言わずと知れた名所ですよね。
”平安時代初期から、宇治の周辺は貴族の別荘地として栄えていました。そのため、公家文化や仏教文化が強く根付いた場所でもあり、平安時代を代表する書物「源氏物語」の舞台の一つにもなっています。数多の平安時代の遺産を残す観光都市であると共に、京阪神のベッドタウンとして機能しています。”
参照:https://www.frontier5566.com/area/26204/
平安から続く歴史と伝統のある街ながら、ベッドタウンとして住み良い街でもあるなんて、素敵ですね。京都市内もたくさんの寺院や伝統的な観光スポット、個性的な雑貨店もかなり充実していますが、やはり住むとなると住みにくそう、というのが正直なイメージでしょうか。笑
バイイングをしていても、完成されたものよりも、新たな価値や気づきを教えてくれるものの方が、やっぱりセレクトのしがいがある。住む場所を一つとっても、自然が豊かだったり、都市としては少し未完成だったり、そういう場所からインスピレーションを受けることも増えています。思えば現代アートも、完成された美しさよりも、問題を提起して見るものに何かを語りかけてくる、考えさせられるものが多いことが魅力なのかもしれませんね。
-【番外編3】日本の街を歩く ~愛知県名古屋市~ -
先日、私の住む名古屋市内にも、面白い建築を見つけたので、ご紹介。
florist・gallery N
http://www.f-g-n.jp/
こちらは、今をときめく建築家の谷尻誠さんの設計したギャラリー&ショップ。名古屋市千種区内に2008年に、個人の邸宅兼ギャラリーとして建築されました。その名の通り、フラワーショップとアートギャラリーが融合した空間です。ギャラリーのオープニングイベントは、谷尻さんの主催するサポーズデザインオフィスの展覧会だったそうです。
“建てることで終わらずに、建てたところからはじまる新しい関係性は、人間の成長過程にも似ている。”
引用:http://openers.jp/article/4707
素敵な言葉ですね。建築というのは、特に立てられる土地や周囲の環境、そして時代背景など、本当に様々な事象が緻密に絡み合って生まれるものだなと感じます。そして、アートやデザインもまた然り。そこに人という存在が介在することによって、無限大の可能性が広がっていくのだと思います。
そんな空間を抜き取ったような建物、ぜひ名古屋にお越しの際は訪れてみてください。
ちなみにこのギャラリー、東京都の神田にも分館のようなものがある模様。
Gallery N 神田社宅
https://bijutsutecho.com/interview/4827/
https://ensemble-magazine.com/2017/04/01/art2/
こちらは、有名な建築家が建築した名古屋ギャラリーとはまた打って変わって、細長い賃貸事務所ビルの一角にあるそう。
名古屋の広々とした雰囲気とは打って変わって、こちらは東京の狭小ビルがひしめき合う通りの一角に位置しています。なんでも、東京の中でもこの神田駅エリアは、江戸時代の名残ある建物が数多く残っており、江戸情緒の溢れるエリアで、駅周辺は昔から職人の街としても親しまれてきたとか。
昔から、数々のアートが人と文化が色濃くひしめき合う環境から生まれてきました。こちらの神田住宅のギャラリーはそんな環境としてはうってつけの場所なのかもしれません。
「住まい」と「ギャラリー」のために作られた、それ自体が建築作品とも言える名古屋ギャラリー、人々の営みからものが生まれるプラットフォームのような神田ギャラリー。そうやって様々な建築、デザイン、アートのあり方が各地を基盤として繋がっていくのはとても面白いと思います。
写真元:http://sohonavi.jp/building/detail_06660/
-【番外編4】地元を歩く 〜名古屋市南区〜 -
写真元:http://nk.xtone.jp/archives/kasaderakannon.html
せっかくなので、最後は私の地元をご紹介。
私が住むのは名古屋市南区。名古屋の中でも南区は比較的緑が多く、どちらかというと住むための場所、という感じでしょうか。下町感のある場所で、子供心に見ると何もなく、それこそ昔はなんでこんな何もないとこに家を建てたの?!と、理不尽にも親を責めたこともありました。笑
でも、大人になって見てみると、昔ならではの趣が残る、とても温かみのある地域だということに気づきました。それは、海外や全国各地での街歩きを通して、どんな場所にもその土地ならではの特性があり、その土地でしか生み出されない建築やデザインがあると知ったから。
そこから感じるようになったことが、「人々の生活の営み」を感じられる場所が私は大好きだということ。思えば雑貨だって、そんな人間の日々の営みから生まれ、そしてその営みをより豊かにするためにまた、カタチを成していく。そう思って見てみると、南区は確かに、都会のように新しいお店やモノに溢れているわけではないけれど、住人の生活臭がプンプンする、なんとも人間らしい雰囲気の漂うエリアなのです。
エリアとして見れば、南区は下町の雰囲気を残す古い家と新しい家が融合して建ち並ぶ地域。そして各地に散らばる緑地公園。旧東海道沿いには笠寺観音や笠寺一里塚などの史跡も残ります。江戸時代の新田開発で愛知海苔などの海産業が栄えたものの、伊勢湾台風以降は衰退し、その後は、鉄鋼や金属などの工場が建ち並ぶ市内有数の工業地帯として発展してきました。
新旧がゆるやかに共存する街並み、工業地帯ならではの無機質な景観、そこに住む人々の生活感がもたらすなんとも人間臭い独特な雰囲気は、すっかり私のルーツとして大きな存在感を誇るようになりました。
そして最近では、そんな街とアートの融合するイベントも開催されたりと、目を向ければ自分の興味のあるものが意外にも近くにあることに気づかされます。先日、笠寺観音でこんなアートイベントが開催されると聞き、足を運んできました。
つなぐ・つながる〜アートで楽しむ笠寺〜
https://www.facebook.com/tsunagu.tsunagaru/
写真元:http://studio-q.moo.jp/2017/02/24/
展示系・音楽・ダンス、と、多岐にわたるジャンルのアートとお寺がつながるイベント。お寺の伝統的な空間で展示されるからこそ生まれる空気感は独特で、地元でいつも慣れ親しんだ風景がアートによって別の景色に変わる瞬間を目の当たりにしました。やっぱり、「いつもの景色」も何かのきっかけで新しい発見をもたらしてくれる。建築やデザインを知ることで得た「発見力」は予想外にいろんな場所で活きてきているのだと思います。
最後に、アートとは少し離れますが、街の自慢は何と言っても日本ガイシホール。有名なアーティストのライブが度々行われています。私はMr.Childrenのファンなのですが、昨年末のライブにも足を運び、熱狂しました。歌が良いのはもちろんですが、ライブ直後に始まるアニメーションもとても楽しみにしている一つです。地元にいながらにして、憧れのアーティストのライブにすぐに行ける、そんなところも気に入っています。
http://www.nespa.or.jp/hall/
名古屋市南区について
参考1:https://www.nissho-apn.co.jp/area/nagoya/minami/
参考2:http://www.city.nagoya.jp/minami/category/139-4-0-0-0-0-0-0-0-0.html
参考3:https://www.jalan.net/kankou/cit_231120000/